日本は内需依存か?

日本=内需依存説に対する疑問

最近、日本は内需依存だという言説を良く聞きます。その論拠として輸出依存度が提示されることが多いようです。輸出依存度とはGDP全体に対する輸出額の割合で定義される指標です。日本の場合、その値は概ね 15% 程度とされています。この指標を海外と比較することで日本は内需依存になっていると言われています。

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しかし、この指標自体に何の意味があるのか、私にはちょっと理解できません。そもそも、この指標が外国の「需要」に依存しているかどうかを表す指標として本当に適切なのかどうかがよく分かりません。確かに、この指標は一国(この場合は日本)の総生産量に対する「輸出」の割合を表しています。ですが、その意味が外国「需要」に対する「依存度」を表すのかどうかは少し怪しいものがあります。

一国の経済が外需に依存するか、あるいは内需に依存しているかは別の指標で考えた方が良いと思います。具体的には、ある国のGDPがどの程度他の国のGDPの大きさ(この値はとりもなおさずその国の総需要です)に依存しているかを測った方がよいのではないでしょうか。別の言い方をすれば、他国の経済規模との連動性で外需依存度を測るべきだということです。

そこで、この記事では実際に他国・他地域との連動性で日本の外需依存度を計測した結果について書いてみたいと思います。

検証の方法

まず、日本がどの国・地域と貿易をしているのかを明確にする必要があります。ここでは財務省貿易統計の数字を参照しました。本来は輸入についても考えるべきでしょうが、依存先の国・地域の選定にあたっては単純に輸出額の大きさで決めることにしました。2010 年度での輸出額上位10国は図の通りになっています。

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どうやら、中国が輸出相手として最大になっていますね。ちなみに、2008年まではアメリカが最大輸出国でした。統計データでは過去に遡って輸出相手国の上位10カ国推移が分かるようになっていますが、相手の面々はそんなに激しく変わりません。そこで、GDP の連動性を測るべき対象となる国・地域はこの10カ国に絞ることにします。

さて、この10カ国+日本のGDPのデータが必要になります。ここでは国連の統計データを使うことにしました。使った値は 2005 年度を基準とした実質 GDP の値です。1990年から2010年までのデータを使ってあります。(台湾に関してはデータが無かったため割愛してあります。政治的な理由なんでしょう、たぶん)

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最後に日本のGDPと輸出相手国のGDPを比較します。ここで輸出相手国のGDPとしては上記10カ国のGDPを単純に合計した値を使うことにしました。毎年の日本のGDPと輸出相手国GDPの成長率の相関関係を見ていきます。

検証の結果

まず、1990年から2010年までを通しで見た輸出相手国GDP成長率と日本のGDP成長率の相関を見てみます。ちなみに、以下の散布図は横軸を輸出相手国GDP成長率、縦軸を日本のGDP成長率にしてあります。

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R2 が 0.5081 ですか、微妙な値ですね。ところが、データを1990年代と2000年代のデータに分けて見てみると、なかなかすごいことになってしまいます。

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2000年代になると R2 が 0.9698 …これって凄すぎないですか?逆に1990年代の場合はそれほど相関は強くありません。

次に地域的に見てみます。2000年代の各年度ごとの中国×日本、アメリカ×日本のGDP成長率を散布図にしてみます。

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2000年代の日本のGDP成長率とアメリカのGDP成長率が綺麗に連動していることが分かると思います。

外需に依存する日本経済という姿

このような結果から浮かび上がってくるのは、内需に依存している日本という姿ではありません。むしろ、1990年代から2000年代にかけて、年を追うごとに外需依存を高めていった日本という姿が浮かび上がってきます。特にアメリカの景気に依存度を強めていった日本という姿が鮮明です。簡単に言えば、日本の景気はアメリカの景気次第だったというわけです。

もちろん、国際比較をしているわけではないので日本単独を見て日本の外需依存度が高いと決めつけるわけにもいきません。よその国の方がよっぽど外需依存度が高いのかもしれません。それはこの結果からは分かりません。しかし、その点だけをもって、日本は内需依存だと決めつけるのも危険です。

また、2000年代に関して言えば、主要輸出国の平均的なGDP成長率が約 2.2% 以上なければ日本はゼロ成長だったことも分かります。日本が年に 3% 成長しようと思えば、主要輸出国に約 4.2% の経済成長をしてもらわなければなりません。2000年代のアメリカの成長率が最大で 4.1% だったことを考えれば、これはなかなかに厳しい数字です。

さて、結局のところ、本当に日本は内需依存なのでしょうか?私はそう思いません。むしろ、外需に依存しきった日本という姿の方がよっぽど妥当性があると考えるべきでしょう。

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