日本のアジア輸出先国の素顔-輸出品目編-

輸出先の国別に輸出額を見る

さて、前回の記事でお話したとおり、今回は日本からのアジア向け輸出について、その輸出品目を見ていきたいと思います。

まずは国別に輸出額のトレンドを追いかけていきましょう。

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このグラフを見る限り、リーマンショック以前は順調にアジア向け輸出を伸ばしていたことが分かります。リーマンショックの後は輸出も鈍っていますね。これはやむを得ないでしょう。

このグラフからは、予想通りというか、中国への輸出が順当に伸びているようですね。では、このグラフを百分率で表示してみましょう。

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ほらね、中国への輸出が伸びていることが理解できると思います。

輸出品目別にトレンドを追いかける

では、次に輸出品目別に時系列でトレンドを追いかけていきたいと思います。今回参照した財務省貿易統計では特殊分類という便利な品目の分類があったので、その分類を採用して輸出品目を分けてみました。金額と構成比のグラフを一度に見てみましょう。

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さて、アジアだけの輸出品目を見ているだけでは、アジア向け輸出の特色を浮き彫りにすることはできません。そこで、今回はアメリカ(この国はいまだに日本からの輸出額 2 位を誇っています)のグラフも作ってみました。次のようなグラフです。

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明らかに傾向の違いが出ていることが分かると思います。つまり、日本の輸出は対アジア向けは工業用原料が多く、対アメリカ向けの輸出では最終消費材が多くなっています。

この裏側にある図式は「世界の工場=アジア」と「世界の消費地=アメリカ」というものでしょう。これらのグラフからは、日本がアジアに高機能部材を中心とした中間産品を売り、その部材を使ってアジアが製品を組み立て、その製品をアメリカが消費するという図式が透けて見えてくると思います。

ただし、注意が必要なのは今後もこの図式が成り立つのかどうかは定かではないということです。リーマンショック以後、アメリカが以前のような旺盛な消費をしてくれる保証はありません。もしも、アメリカが消費できないとなると連鎖的に先ほどの物語が崩壊していきます。「日本の部品-アジアの組立-アメリカの消費」という図式は川下の前提が崩れてしまえば、川上側にも大きな地殻変動をもたらすと考えられます。

また、この物語の崩壊を加速させかねない事象も観察されます。それは、対アジア輸出について、資本財の輸出が減るかわりに工業用原材料の輸出が増えている点です。これは何を意味するのでしょうか。このトレンドの裏側にあるのは、日本が今まで資本財をせっせと輸出することでアジア諸国に必要十分な生産能力が備わってきたということだと思います。資本財とは簡単に言えば生産設備です。アジアにはすでに十分な工場も生産機械もあります。原料さえ仕入れることができればモノづくりができるのです。つまり、工場や機械はもう要らない、そのかわり原材料だったら買ってあげますよ、と。

資本財・工業用原料を輸出先国別に見る

では、資本財と工業用原料に関してもう少し詳しく見ていきたいと思います。これらの輸出品を国ごとに分けて見ていきます。まずは、資本財の輸出先別金額の推移をグラフにしたものを見てみましょう。

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ここでも、中国に対する資本財の輸出が堅調に伸びています。他の国々に関しては、まぁ確かに上下動はありますが特筆するべきでもないかなと思います。なので、このグラフはあえて積み上げだけにしてあります。

今度は工業用原材料の国別推移です。

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中国、韓国、台湾に対する輸出額が年を追うごとに伸びてきていますね。先ほどのグラフで、韓国、台湾の資本財輸出の伸びがさほどでは無かったことを思い出してください。これは何を意味するかというと、まさに韓国や台湾では「生産設備から部材へ」という流れが進展しているということです。

その点を確認するために次のようなグラフを作ってみました。

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このグラフは工業用原材料の輸出額を資本財の輸出額で割ったものを時系列にプロットしたものです。この指標が 1 を超える場合、資本財よりも工業用原料の輸出が多いことを意味します。同様に 1 以下の場合は、まだ資本財の輸出が多いということです。

このグラフからは、韓国、台湾が「生産設備から部材へ」という流れの中にあることが明瞭に見えてくると思います。また、全体的に見ても、その物語が緩やかに進展していることが分かると思います。ただ、中国は… 微妙です。生産設備も部材もモリモリ輸入しているわけですからね。

まとめと課題

まとめます。

(1) 日本の対アジア輸出に関しては、とりわけ中国への輸出が年々増えている
(2) 日本からアジア向けには工業用原料の輸出が多く、アメリカ向けでは最終製品の輸出が多い(輸出の傾向が異なる)
(3) アジア向け輸出に関して、資本財の輸出が減り、かわりに工業用原料の輸出が増えている
(4) 特に韓国、台湾に関しては、既に資本財の輸出よりも工業用原料の輸出の方がウェイトが高くなってきている
(5) 中国は資本財も工業用原料も並行して輸出が拡大している

少し、補足をしておきます。

実はこの調べ物をする前はアメリカに対する資本財の輸出はもっと少ないだろうと思っていました。ですが、私としては意外なことにアメリカに対しても資本財輸出を行っているのですね。本当は、アメリカ=最終製品、アジア=資本財と原材料、という図式がもっと色濃くでるのかと思っていました。ですが、この調査からは資本財に関してのエッジの効いた結論を出せませんでした。ただ、その中身についてはもう少し詳しく調べてみる価値があると思います。これは今後の課題です。

また、資本財の整備が飽和すると次に原材料が必要になるというのは恐らく必然的なことだろうと思います。ですから、誰かが理論的確立をしているだろうと思っています。このあたりの文献についても調査を進めてみたいと思います。