有価証券報告書から見る関西電力の原発

関西経済と原発

3.11 以降、にわかに電力会社が注目を浴びたと思います。原発については、いまだに喧々諤々の議論が交わされています。原発の問題は今後も大きな波紋を日本にもたらすでしょう。

また、以前からこのブログでは関西経済をテーマにあれこれと記事を書いてきました。私としては(どちらかと言えば)こちらの方に関心があります。

安直かもしれませんが、関西×原発、ということで関西電力のことを少し調べてみました。実際に調べてみて分かったのですが、2012/03 の決算は本当に残念な内容です。本当に原発の問題にしても、関西経済の問題にしても道のりは厳しいと改めて痛感しました。

今回は、関西電力について私が有価証券報告書を見ながら調べた上で分かったことをお話してみたいと思います。

関西電力の利益率を決めるもの

まず、関西電力の有価証券報告書から電力需要と供給の数字が拾えました。グラフにするとこのようになります。

BL201205-04-01

このグラフから理解できることは次の 2 点でしょう。

(1) 電力需要の変動には火力発電で対応している

(2) 地震の影響で 2012/03 時点原子力と火力の供給量が逆転した

まず、(1) に関しては特に 2005/03 頃から 2011/03 頃までを見ると理解できると思います。微妙ではありますが、電力需要の増減に対応して火力発電が増減していることが分かります。その期間、原子力及び水力の電力供給量は比較的安定しています。

また、(2) に関しては言うまでもないでしょう。このグラフでは 11 年間の推移を記載してありますが(データが拾えたのでそうしています)、地震が起きる前までは、常に原子力をベースとして関西電力は電力を供給していました。ですが、その状況が 2012/03 時点で崩れています。かなり異様な事態でしょう。

このような供給形態の変化は電力会社の収益に大きな影響を与えるようです。営業収益(つまりは売上)と営業利益に関するグラフを描くと下図のようになります。

BL201205-04-02

このグラフは先ほど指摘した2点の特徴と連動しています。すなわち、火力発電による電力供給割合が関西電力の利益率に連動しています。このことはよくよく上下のグラフを見比べてみると理解できると思います。

さらに、営業収益の動きを良く見てみると年度によって余り変動の無いことが分かります。営業収益が一定である場合に利益率が下がるとすれば、その要因はコストがかさむこと以外に考えられません。

このことは火力発電がコストパフォーマンスの悪い発電方式であることを暗示しています。火力発電を増やすことでコストがかさみ、その一方で収益は年度ごとでそれほど変わらないために利益率が下がってしまうという構図があるのでしょう。

電力会社叩きは望ましいか

現在、電力会社に対する風当たりは非常に厳しくなっていると思います。電力会社の利益のお話をすると「今まで散々儲けていたのだから、そのしっぺ返しを食らっているのだ、いい気味だ」といった反応が返ってくるかもしれません。特に某掲示板なんかではその論調が多いような気がしますねぇ…。

ですが、利益というものは、その企業なり経営主体の運営が健全かどうかを測るためのバロメータです。コストという制約条件の中で企業がうまく切り盛りできているかどうかを判定するための指標なのです。逆に言えば、キチンと利益が出せていない企業というのは、その背後に何らかの問題があります。

特に電力会社は公共性の高い企業です。そのような企業が風邪をひいてしまうと社会全体にも大きな影響を及ぼします。電力会社が適切な利益を出せるかどうかは普段生活している私たちにも間接的に大きな影響のある社会問題です。

そのような側面を反映してのことだと思いますが、大阪市と神戸市が関西電力の大株主として名を連ねています。平成 23 年 3 月決算期の有価証券報告書を見ると、大阪市は関西電力の 8.92% の株式を保有する筆頭株主です。また、神戸市は 2.91 % の関西電力株式を保有しており、第 4 位の株主となっています。

このように地方自治体が関西電力の株主になっているということは、尚のこと関西電力の利益が出ないことが問題になります。というのも、このまま利益が出せないとすれば、結果的に株主価値が毀損されることになります。株価も下がるでしょう。そうすれば大阪市や神戸市も損失を受けることになります。この損失は結局税金で補填されることになります。ほら、電力会社の利益なんて私には関係無いなんて言えないですよね。

結局、あまり深く考えずに電力会社を叩くというのも結局は自分自身にツケが回ってくることになります。

既に原発が社会にあるという事実

今回、私は初めてまじまじと電力会社の有価証券報告書を眺めてみましたが、何に驚いたと言って、固定資産の勘定科目に「核燃料」というものがあるということに吃驚しました。「核燃料」という勘定科目は、さらに「装荷核燃料」及び「加工中等核燃料」という勘定科目に細分化されて関西電力の有価証券報告書に記載されています。

このような「核燃料」という固定資産はどの程度あるのでしょうか。原子力発電設備と合わせてグラフに図示すると次のようになります。

BL201205-04-03

関西電力の 2011/03 時点の決算短信では、固定資産の約 13% に相当する 8900 億円ほどが原子力関連の固定資産として計上されています。この事実は深く受け止めるべきではないでしょうか。8900 億円程度の原子力発電に関する資産が既に関西に”ある”のです。事実として “ある” ものを無かったことにすることはできません。

原発を止めろ!と言うだけなら簡単です。ですが、既にこれだけの金額の原発という社会資本が蓄積されています。これを一夜にして御破算にしてしまうのは現実的に不可能だと私は思います。また、先ほども指摘した通り、原発による発電をしない限り、現在の状況では電力会社の赤字が積み上がっていくだけでしょう。こちらも社会の安定性という観点からは望ましくありません。私は安易に原発を止めろとはとても言えません。

原発に関しては長期的には減らしていった方が良いと思いますが、足下を見れば原発と付き合っていくしかないと私は考えています。当然、私と意見の違う方もおられると思います。ただ、これだけの金額の原発関連資産が既に関西にあるという事実については頭の片隅に入れておいて損はないと思います。