世界全体のパワーゲームの中での道州制議論

統合に向かう欧州

ギリシアのデフォルト騒動に端を発する欧州財務危機は未だ混迷したままです。何とかギリシアはデフォルトを(詐欺のような方法で…)免れたものの、その余韻は欧州全体を直撃しています。

欧州各国の失業率も大変大きな問題です。スペインでは失業率が 24 % にもなっています。4 人に 1 人が失業しているということで、これはとんでもない事態です。しかも、若い人ほど職を見つけることができていません。また、欧州各国の長期金利の急騰も問題です。イタリアは長期金利が昨年の 11 月に 7% を超えてしまいました。こちらも目が離せない状況と言えるでしょう。

欧州の問題の根底にはユーロという通貨の問題があります。EU 各国は通貨ユーロの発行権を持っていません。勝手にお金を刷るわけにはいかないのです。各国に通貨発行権がないにもかかわらず、その財政は各国に委ねられています。この歪みが EU の根本的な問題です。EU 各国は中途半端に一つ屋根の下に暮らしているというわけです。

その処方箋として欧州全体の財政統合が叫ばれています。今までお金の使い方は各国に委ねられていたわけですが、これを修正しようということです。各国に好き勝手に放漫財政を敷かれては、EU 全体が危うくなります。これは困ったことです。そこで、お金の使い方も EU 全体で管理していこうというわけです。

今までは、ドイツ家、ギリシャ家、スペイン家といった面々が家名を保ったまま EU という旗の下に集まっていたようなものです。しかし、これからはそういうわけにはいきません。各国の伝統ある家名を捨てて EU 家という新たな制度の下に統合しようとしているわけです。

欧州は危機を経て、一つになる方法を模索しているのです。

道州制を議論する日本

一方、日本でどのような議論がなされているかと言えば、道州制の議論をしています。日本の各州に権限を委譲、分権化して地域を活性化していこうという議論です。

道州制が実現されれば、財政は各州に委ねられることになるでしょう。各州が独自性を発揮して各地域ごとの財政を切り盛りしていくことになる。財政の権限を中央から地方に移譲していこうとしているわけです。

日本は中央の権限が強すぎる、それこそが日本の停滞の原因だ、とする議論が散見されます。これが本当かどうか私には良く分かりません。欧州の事例を見ていると本当かどうか疑わしいという感想を私は持ってしまいます。欧州は各地域の権限の強さが問題だとされているわけですからね。

少し話が脇にそれましたが、とにもかくにも、欧州との対比で言うならば日本は分散化する方向を模索していると言えます。

一つになる欧州、分散化する日本

この欧州と日本の温度差の違いが私には大変興味深く思えます。

どちらも経済の問題に頭を悩ませていることに変わりはありません。ですが、その処方箋の違いが非常に大きい。欧州は地域主権が問題だとされています。その一方で日本の場合は中央集権が問題だとされています。全く真逆の処方箋を検討しているわけです。

どちらの処方箋が効果的かと言われれば、曖昧な答えですが、薬の配合具合によるということになると思います。中央集権も地域主権もどちらも一長一短あります。どちらか一方に偏ることは危険だと思います。その時々で薬の処方を変えていかなければ仕方が無い。

パワーゲームを前提とする世界情勢の中での道州制議論

ただ、確実に言えることは、現今の世界全体は生き残りをかけたパワーゲームの様相を呈しているということでしょう。

崩壊寸前にまで追い詰められた欧州は財政統合を通じて一つになろうとしています。アメリカだって同じです。生き残りをかけて太平洋地域の盟主の座を不動のものとすることに血眼になっています。また、あまり注目されていないと思いますが、ロシアはユーラシア連合を作ろうとしています。そして、中国は明らかに東アジアのプレゼンスを拡大することを狙っている。

そんな中、日本が地方分権という薬の配合具合を増やすことは如何なものかなと私は思います。