ROA の分子に事業利益を使う理由

ROA の定義の曖昧さ

とりあえず財務分析をしようとするときは、まず ROA を使うと思います。ROA は資産と利益のバランスをコンパクトに表す指標です。資産だけを見るのでもなく、利益だけを見るわけでもない。両方の要素を含んでいるので情報量も多いです。”とりあえず” 財務分析する場合の使い勝手は非常に良いと思います。

ところが ROA を計算する場合には少々問題があります。結構、人によって分子に持ってくる利益を何にするべきかが異なるのです。税引き後利益を使うという人もいます(私はこれは乱暴すぎると思う)。また、経常利益を持ってくる人もいます。キチンと事業利益を計算して使いなさいという人もいます。定義が曖昧なのです。

定義そのものは曖昧にされているのですが、理屈で言えば正解はあります。ROA の分子には事業利益を使うべきです。それは何故なのでしょうか。

ROA の分子に事業利益を使う理由

その答えは、ROA が何を測ろうとしているか、何の指標なのかを考えれば自然に理解できます。ROA は企業の持てる全ての力を使ってどれだけの利益を稼ぎ出すことができたかを知るために使います。その構造を図示すると次のようになります。

BL201205-10-01.png

先ほど「企業の持てる全ての力」と言いましたが、それは総資産にあたります。そして、総資産はその企業が本来の事業で使っている「事業資産」と投資などで活用している「非事業資産」に分けることができます。資産を遊ばせておくのはもったいないので何かに投資されているわけです。これが非事業資産。総資産に関しては殆ど議論の余地はないと思います。

資産を活用すれば何がしかの収益が入ってきます。ROA は「企業の持てる全ての力」がベースなので、まず対応する収益を考える必要があります。この点に関しても、それほど議論の余地はありません。事業資産の活用によって売上(①の部分に相当します)が入ってきます。また、非事業資産を活用することで利息・配当(②の部分が該当)が入ってくるわけです。したがって、「企業の持てる全ての力」を使って獲得できた収益というのは、図で言うところの、①と②が該当するわけです。

最後に考えないといけないのは収益から費用を差し引いた利益の部分です。実はここは大いに議論の余地があるところです。

「利益とは何か?」実はこの質問はナンセンスです。定義のしようがないのです。実は利益というのは「誰にとっての?」という限定をつけなければ定義できません。利益というのはステークホルダーが寄り集まって稼いできた収益を誰に対して如何に切り分けるかという問題です。パイの奪い合いの問題なのです。パイを奪い合う場合に、誰がどのように関与しているかを考える必要があります。

ROA の利益と言う場合、資金調達の源泉となった人たちの利益を考えます。逆に言えば、仕入先とか従業員の分け前と言うのはコスト=費用なのですね。また、減価償却に相当する部分も分けてしまうわけにはいきません。とすると ROA を考える場合の利益と言うのは、結局、上の図の (① + ②) - (③ + ④ + ⑤) の部分が該当することになります。

さて、日本の会計制度のもとでは、営業損益計算、経常損益計算の順番に計算が行われていきます。営業損益計算では売上から原価を差し引きなさいとなっている。なので、営業利益として ① - (③ + ④ + ⑤) が表示されてしまいます。とすると、ROA を計算する場合は ② の部分が省かれてしまいます。だから、ROA を計算する場合の利益には ② の部分を足しこまないといけないのです。すると、ROA の分子に持ってくる利益というのは 営業利益 + 受取利息・配当。

ほらね、事業利益が出てきたでしょう。

丸暗記はいらない

こういう風に考えていけば、「ROA を計算するには事業利益を使って、事業利益というのは営業利益に受取利息・配当を足して云々…」みたいなことを丸暗記しなくても良くなります。これ、丸暗記しようとするとかえって面倒です。覚えられないですよ、普通。

そうではなくて、このような図を頭の中に描いていけば、おのずとどういう計算をすればよいかが分かってくるようになります。

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