書評 / 藻谷浩介 「デフレの正体-経済は「人口の波」で動く」

間違ったタイトル

本書のタイトルはいささかミスリーディングです。本書は「デフレ」というキーワードを冠につけるべきではありません。それはむしろ「低経済成長」という用語に置きかえられるべきです。

つまり、本書の表題は「低経済成長の正体」とでも読みかえるべきです。

もちろん、この表題だと読者にオヤ?と思わせることができないので、「デフレ」という耳目をひきやすい言葉に変えたのでしょう。それは著者というよりも出版社側の都合なのでしょう。

何故、日本は低経済成長なのか?

本書のタイトルにケチをつけたところで、それはいささかも本書の価値を減じるものではありません。本書の内容は十分傾聴に値するものだからです。

何故、日本は低経済成長なのでしょうか?その理由は日本の生産年齢人口の減少にあると著者は主張します。私も著者の主張に同意します。日本の根本的な問題は人口問題なのです。

経済成長のための要因としては、一般に「人口」「資本蓄積」「技術革新」の 3 要素が重要です(ただし、本書ではこの 3 要素を全面に出して論が展開されているわけではありませんが…)。この中で人口が一番大きな問題だと言うためには「資本蓄積」「技術革新」は余り重要ではないと言わなければなりません。

「資本蓄積」とは言いかえれば「生産性を向上すべき」という議論と同じです。人口減少に伴う国内需要の減退を理由にして、著者はこの問題を退けます。人件費カット=機械化したところで、機械が作ったものを一体誰が買うのですか?という議論です。機械にお金を渡したところで機械がモノを買ってくれるわけではない。それならば逆に GDP は下がってしまいますよ、ということです。

また、著者は「技術革新」についても重要ではないと言います。、技術革新を進めて外貨を稼げても、そのお金が国内に回る仕組みが無ければ意味がないではないかという論の展開で、この問題をかわしています。

人口問題に関心がある人のための本

結局、本書の主題を要約すれば「日本の低経済成長の原因は人口問題である。従って人口問題にこそ手を打つべきである」ということです。そして、この問題に対する処方箋を著者は幾つか提案しています。

著者の主張および処方箋には賛否両論あると思います。ですが、本書は日本の人口問題に関心のある人ならば読んでおくべき本です。本書のような情報を持った人たちが増えてくることで日本の人口問題に対する関心が高まり、本格的な議論が高まってくることを私は期待しています。

まずは人口問題に関心を持つことが大切です。そして、本書はそのための入り口となってくれるでしょう。