緊縮と成長の狭間で揺れる欧州-オランド氏勝利の衝撃-

フランス大統領選挙の激震

フランス大統領選挙が社会党のオランド氏の勝利で終わってから約 1 週間が経過しました。この間、オランド氏勝利の激震は世界中を駆け巡りました。この事件は欧州がターニングポイントに入ったことを意味しています。

以前はメルケル・サルコジの路線で欧州は緊縮財政でまとまる方向性に進んでいました。私も欧州はギリシャのデフォルト危機を乗り越えて、曲がりなりにも手を携えて進んでいくのだろうと思っていました。

ところが、オランド氏は欧州の緊縮財政に「待った」をかけました。財政再建路線で欧州再生の道を進むと思っていたものが、ここにきて雲行きが怪しくなってきたのです。

緊縮財政か経済成長か

欧州の緊縮財政を何としても進めたいのがドイツです。ドイツのメルケル首相は緊縮財政を進めるという方向性に固執しています。

ドイツとしては「何故、欧州の放蕩息子たちをドイツが助けなければいけないのか?」という思いがあります。放蕩息子たちとはギリシャを筆頭にスペイン、ポルトガルと続く国々です。所謂 PIIGS 諸国です。これらの諸国の財政規律の甘さが欧州危機を生んだとドイツ人たちは考えています。

EU というひとつ屋根の下で共同生活を始めた欧州ですが、デキの良いのもいればデキの悪い国もあります。稼ぎの悪い国々から見れば、生活が苦しくなってきた時に稼ぎ頭の国からお金を引き出したいと思うのは当然です。逆に、ドイツなどの欧州の優等生から見れば、周囲にお金を毟り取られる役割を期待されていると感じられるのです。そんなのは堪ったものではない。ですから緊縮財政にこだわるのです。

ですが、ドイツにとっては分が悪い戦いになりそうです。

まず、緊縮財政を進めていたオランダ内閣が 4 月下旬に内閣総辞職をしました。財政緊縮策を巡って連立与党との協議が決裂してしまったためです。そして、今度のフランス大統領選挙でのオランド氏の勝利です。オランド氏は緊縮財政から一転して政府支出を増やす方向性に舵を切ろうとしています。ここにきて、緊縮財政から経済成長(という名の大盤振る舞い)へと欧州の風向きが変わってきている。

欧州は緊縮財政か経済成長かの狭間で大きく揺れているのです。

(面白いことに、アメリカは無責任にも「財政再建しながら経済成長させるべきだ」と言っています。それができたら誰も苦労なんてしないのですが…)

不安定な欧州

今後、どちらの方向性が優勢になるか、それは分かりません。

ただ、緊縮財政の方向性が復活するようならば、ギリシャやスペインの国々の社会不安が増大することになります。これらの国々では失業率が 20 % を超えるという異常な事態が起きています。あくまでも緊縮財政を貫くとなれば、これらの国々の失業者が切り捨てられることになります。そうなれば各国ともただでは済まないでしょう。

その一方で経済成長という名の財政大盤振る舞い路線が鮮明になれば、ドイツの不満が高まることになります。また、ドイツのメルケル首相が言うように、大幅な財政出動という方向性は欧州危機を生んだプロセスを再度繰り返すことに繋がりかねません。そもそも、ギリシャなどが借金漬けで生活していたことが欧州危機の根本的な原因だからです。

いずれにせよ、当面の間、欧州は不安定な道のりを歩むだろうと私は考えています。