素晴らしきスモールデータの世界

ビッグデータの波と時代遅れの私

ITの世界では、今やビッグデータの時代がやってきました。

企業ユーザは大規模データの問題に頭を悩ませています。扱うデータが大量にあるため既存のテクノロジーでは対応できないのです。そのため、あまりにも巨大すぎるデータを活用するためのソリューションが必要とされています。

IT ベンダー各社は、このようなユーザの声に応えるための製品開発に鎬を削っています。より大量のデータを高速かつ快適に処理する製品が続々開発されています。ユーザ側もこのような製品を導入することで自社の収益性を高めることができます。ビッグデータの活用はユーザ側およびベンダー側の双方にとって望ましい未来を約束するものです。

私のような時代遅れの人間から見れば、実に羨ましい話です。

残念ながら、この領域で私にお手伝いできることは何もなさそうです。私のような人間には、スモールデータの世界で人々のお役に立つ道を見つけ出すしか方法が無さそうです。

スモールデータと格闘する人々

世の中、まだまだスモールデータと格闘している人々や企業はいっぱいあります。

以前も調べたことですが、大手企業であっても情報システムを導入していないところもあります。このような企業はどのようにしてデータを処理しているのか私には不思議で仕方がありませんが、何とか人力で対応できるだけのスモールデータしか扱っていないのかもしれません。

高々数千~数万件の宛名ラベルの印刷で四苦八苦しているような人や部署って平気でありますよ。このような処理を自前で EXCEL や ACCESS を使って印刷している従業員の方々もおられます。このような処理を大抵のシステム屋は内心バカにしています。「え? EXCEL でやっているんですか!?」こういう言い草を私は何度も聞いてきました。

このようなシステムのエキスパートの人々は、最新の機械と最新のテクノロジーを使って多くの問題を解決してきました。この人たちのお陰で、例えば、せいぜい数十~数百万件のバッチ処理が何と 2 時間で処理できるようになったのです。システムの利用部署はバッチ処理が 2 時間しかかからないことを前提にシフトを組むことすらあります。システム側の都合なので、人間がそれに合わせるしかないのです。

すると、別のシステムベンダーがやってきて「2 時間はかかりすぎです。私なら 10 分で終わらせることができます」と言いました。大変素晴らしい話なので 1 年かけてそのプロジェクトに取り組むことにしました。今からちょうど 2 年半前のお話です。まだ、そのプロジェクトは終わっていません。

このように、システムベンダーはスモールデータの扱いが大変上手です。彼らにとって、スモールデータはもはや卒業したも同然の問題です。ユーザから見ても、もはやスモールデータは大きな問題ではなくなりました、ですよね??

ですが、スモールデータには、まだまだ未開拓な部分があると私は思います。そのような領域でお手伝いできれば私は十分です。そして、そういう領域こそが一番ユーザの喜んでくれる領域です。

日本企業の現場力

スモールデータを扱うことでユーザが喜んでくれるだけではありません。日本企業の現場力と言うのはなかなかに凄いのです。

MOT(Management of Technology : 技術経営と言われます)の世界では、ビジネスプロセスを「モジュラー型」と「すり合わせ型」に分類する場合があります。細かい話は省きますが「モジュラー型」と言うのは欧米企業にありがちな方式です。仕事の割り方を部品化して、それぞれを組み合わせる方式です。一方の「すり合わせ型」というのは、現場に近いところに創意工夫を促す方式と考えてもらえれば結構です。現場に大きな裁量を与え、時間と労力をかけて改善を積み重ねていく方式と言ってもいいです。トヨタなどが有名ですね。そして、日本企業の強みは、この「すり合わせ型」にある場合が多いのです。

ビジネスの現場に近い部分では、当然スモールデータを扱うことが多くなります。現場独自の知恵と工夫を凝らして厳選したデータです。それらのデータをうまく活用することで、日本の現場力という強みを生かすことができます。傍から見ると「何でそんなデータが必要なの?」と思える場合も多々あります。ですが、それは現場の知恵と努力の結晶なのです。そこにこそ宝の山が眠っているのです。

システムユーザとシステムベンダーへのお願い

システムユーザの皆さんにお願いがあります。是非、日本企業の強みを思い出してください。現場が日々努力することで高い品質の製品を生み出し、世界に Made in Japan の名を轟かせた、あの時代のことを思い出してください。そして、現場の人々が扱うスモールデータこそが宝の山なのだということを思い出してください。スモールデータを扱うことはシステムユーザの皆さんの誇りなのです。

また、システムベンダーの皆さんにもお願いがあります。ビッグデータのビジネスで、せいぜい、がっぽり儲けてください(ただし自己責任でお願いします)。そして、二度とスモールデータの価値に気付かないでください。