EU 域内貿易に見るドイツ1人勝ちの構図

緊迫する欧州情勢

今、欧州情勢は非常に厳しい状況に置かれています。

最近の選挙でフランスの人々は緊縮財政に「否」の答をつきつけました。フランス社会党、オランド氏の勝利です。フランスの新しい体制は、今後どのような動きになるのか、世界中の人々が注目しています。

また、ギリシャでも緊縮財政に対する反対の声が高まっています。これは非常にヤバい。ギリシャのデフォルト問題が再燃してくるからです。欧州ではギリシャの EU 脱退やむなしの声も出てきているようです。

さらに欧州財政危機はスペインにも飛び火しそうです。最近、スペインでは緊縮財政に反対する人たちのデモが行われました。失業率が 25 % にも達しようかという勢いの中、もはやスペイン国民も堪忍袋の緒が切れそうな勢いです。

そんな中、ドイツだけが1人勝ちの様相を呈していると言われています。

ニュースとかで話を聞いている限りでは、そんなものかなとしか思えないでしょう。しっかり数字を見て判断することが大切だと思います。そこで、この記事ではドイツ1人勝ちの構図を数字で見ていきたいと思います。今回は EU 域内での貿易収支の数字にフォーカスを当ててドイツ1人勝ちの構図を確認してみたいと思います。

欧州の域内貿易とGDP

まず、欧州の域内輸出+輸入のシェアと GDP の関係を見てみましょう。下図は横軸に欧州域内の輸出(Export)シェアを取り、縦軸に欧州域内輸入(Import)シェアを取ったマトリクスに GDP をプロットしてみたものです。図の右に行くほど輸出が大きく、上に行くほど輸入が大きいことを意味しています。

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まず、この図から理解できることは、ドイツだけが活発に外国とモノの売り買いをしながら経済規模(GDP)を大きくしているということでしょう。フランスはやや輸入超過気味ですね。イタリア、スペインはバランスが取れています。そして、結構面白いのはオランダです。GDP 規模は大きくありませんが、着実に輸出で稼いでいることが分かります。

欧州の勝ち組ドイツ(とオランダ?)

各国別にもう少し詳しく見ていきましょう。まず、ドイツが 2000 年から 2011 年までに輸出入シェアに関してどのような軌跡を辿ってきたかを確認してみましょう。

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グラフからはドイツが 2000 年から 2007 年頃まで一貫して輸出シェアを拡大してきたことが理解できます。ドイツ1人勝ちの構図はここにありそうです。つまり、ドイツ国内で生産したものを他の EU 諸国に輸出することでバリバリとお金を稼いできたのです。

ただ、リーマンショック以降、さすがにやばくなってきたのでしょうか、ドイツは軌道修正していることが分かります。輸出で儲けまくったドイツはある程度輸出を維持しつつ輸入も積極的に行うようになっています。

これはかつての日本の姿とダブりますね。アメリカに散々輸出して稼いだために、「金持ってんだからお前がモノ買え!」と言われたかつての日本の姿です。

また、ドイツの方向転換は別の解釈もできます。欧州が経済的に疲弊していく中、ドイツだけが一人気を吐いて欧州全体の経済を支えていると見ることもできます。欧州の経済はドイツの消費にかかっているのかもしれません。

それから、余り注目されていませんが、面白いのはオランダの動きです。

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オランダは一貫して輸出を増やしているんですね。これはオランダがドイツの勝ちパターンを真似しているということかもしれません。GDP 規模はそれほどではないので、目立たず輸出でこっそり稼いでいるという構図とも考えられます。オランダ、結構ズルいのかもしれません。

欧州のルーザー(負け犬)たち

ルーザーと言うと聞こえが悪いかもしれませんが、欧州の勝ち組ドイツと逆の動きをしている国々があります。フランス、イタリア、それからスペインです。これらの国々についても見ていきましょう。

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まず、フランスとイタリアです。これらの国は輸入も輸出もシェアを減らしています。ドイツとは正反対のパターンですね。このパターンの場合、国内需要が健全であれば何とかなるのかもしれません。フランスなどは大丈夫なのかな?イタリアは経済的にヤバいとチラホラ囁かれていますね。

最後は新しい欧州の火種=スペインです。

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輸出はそれほど減っていませんが、輸入が一気に減退しています。何故こういう図式になるのか分からないですが、時期的に言って、ドイツが輸入を増やし始めたことで何とかドイツにスペイン製品を買い支えてもらっているという構図なのかもしれません。

ドイツの動きが欧州情勢の鍵を握る

ここまで見てきて分かることは、欧州におけるドイツ1人勝ちの構図は信憑性があるということでしょう。

ドイツだけが域内輸出を増やしてお金を稼ぎまくっている。それ以外の国はドイツに輸出で勝つことができず、欧州全体の需要をドイツにかっさらわれてしまったという構図です。さらに最近では負け組の足腰が立たなくなってきて、何とかドイツに買い支えてもらっている、と。

やはり、今後の欧州情勢を占う上でドイツの動きが鍵を握ることは明白です。ドイツの機嫌を損ねてしまうと欧州全体がパニックに陥ります。何といっても王様状態なのですからね。ドイツの動きから目を離すことはできません。

あと、オランダの動きは面白いですね。チェックしておく価値があると思いますよ。

※なお、本稿の資料は EuroStat のデータをもとに筆者が再構成したものです