家電量販店戦争の行方-ビックカメラ・コジマ連合軍の逆襲はなるか?-

家電量販店の業界再編か?

先日、ビックカメラがコジマとの資本提携をするとの発表がありました。この動きは家電量販店業界の業界再編を促すものとする見方が大勢を占めています。

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家電量販店業界は極めて競争的な業界です。2010/03 時点の資料では、業界首位のヤマダ電機のシェアは 35.10% にも上ります。ついで、エディオン(14.30%)、ケーズホールディングス(11.30%)となっています。

今回の資本提携は業界 4 位のビックカメラと業界 5 位のコジマのカップリングです。この資本提携によって、ビックカメラ・コジマ連合軍の業界シェアは 17.9 % を占めることになり、一気に業界 2 位に浮上することになります。

今後の焦点としては、首位のヤマダ電機をビックカメラ・コジマ連合軍がどれだけ盛り返せるかという点にあると思います。家電量販店の業界再編はなかなか面白そうな話なので、ここではもう少し掘り下げて財務分析してみましょう。

勝負を決めた規模のスパイラルループ

まず、ヤマダ電機、ビックカメラ、コジマ各社の収益性を見てみましょう。

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調べていて、あまりにも当たり前の結果が出てしまったので少々退屈なのですが、この業界は完全にヤマダ電機の1人勝ちですね。売上高に関してはヤマダが増加傾向、ビックカメラは横ばい、コジマが下落という感じです。収益性に関しても、ヤマダ>ビックカメラ>コジマの順番は変わりません。家電量販店というのは、もう単純に規模だけで勝負が決まる世界ですね。

規模で勝負が決まるのはいいのですが、この構図の怖いところはスパイラルループが形成されてしまうことです。どういうことかと言うと、少しでも規模に差ができてしまうと、大きなところはさらに大きく、小さなところはさらに規模が小さくなってしまうのです。

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上図は 3 社の有形固定資産の推移をグラフ化したものです。いかがでしょうか。規模を拡大し続けるヤマダ電機、何とか現状維持のビックカメラ、規模が縮小し続けるコジマという図式が透けて見えます。ヤマダ電機は好業績が新規店舗出店の原動力になったのでしょう。逆にコジマは業績悪化によって不採算店舗を廃止していくことで規模が小さくなっていったのだと思います。

家電量販店のバイイングパワー

このように、規模こそが家電量販店の勝負を決めています。しかし、何故、規模が大きくなれば有利になるのでしょうか?その秘密はバイイングパワーにあります。

バイイングパワーとは、有利な条件で商品の仕入ができる力のことです。考えても見てください。大口のお客さんに対して、売り手は強気に出ることはできませんよね。大得意先であればあるほど無理な注文も聞かざるをえなくなりますし、値引き交渉にも応じざるをえません。家電量販店のトップであるヤマダ電機に対して、メーカー各社は価格交渉力が弱くなってしまうのです。その一方で、規模がそれほど大きくないビックカメラやコジマは、ヤマダ電機ほどのバイイングパワーを持つことはできません。

では、各社のバイイングパワーはどの程度あるのでしょうか?家電量販店各社のバイイングパワーを測るために、ここでは買掛金回転日数を計算してみましょう。買掛金回転日数とは、買掛債務が平均的に何日で決済されているかを表す財務指標の一つです。

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バイイングパワーを発揮して、さぞかしヤマダ電機は買掛金の決済を遅らせているのだろうと期待してこのグラフを描いてみたのですが、期待外れの結果になってしまいました。面白いことに予想とは真逆の結果なんですね。ヤマダ電機は買掛債務の決済を他社に先駆けて素早く行っているのです。

これはどういうことかと言うと、買掛債務の支払を早めに行うことでメーカーに対して値引き交渉を行っていると考えられます。個人でもよく使う手ですよね。現金決済をちらつかせて値引き交渉するという方法です。家電量販店各社も同じようなことを行っているのでしょう。特に、家電量販店は一般消費者相手のビジネスですから現金で販売代金の回収を行えます。売掛金の回収にあまり悩まないのでしょう。お金の回収にタイムラグが無いので、買掛債務の支払いも極限まで切り詰めた方が価格交渉上は有利になるのでしょう。

このように買掛金回転日数からは家電量販店各社のバイイングパワーを垣間見ることはできませんでした。ですが、その購買量は確実にヤマダ電機が他を圧倒しています。グラフでは各社の売上原価をプロットしてみましたが、ヤマダ電機の購買量の大きさがここから読み取れると思います。ヤマダ電機はボリュームディスカウントによるバイイングパワーを確実に発揮できていると思います。

ビックカメラ・コジマ連合軍の逆襲はなるか?

今回のビックカメラとコジマの資本提携によって、両者はバイイングパワーを獲得することになります。メーカーに対する圧力を強めることができる。そして、ヤマダ電機との価格競争に耐えうる体制を築くことがまさに両者の狙いでしょう。

ですが、そうそう簡単に行くものでしょうか?当然、他社も黙ってはいない可能性があります。エディオン、ケーズ HD も連衡合従策を採ってくる可能性があります。もちろん、ヤマダ電機も黙ってはいないと思います。今回の資本提携が業界再編を加速させる可能性があります。

さらに、メーカー各社にとってみれば川下側の業界再編という地殻変動は大きな問題です。だって、自分たちの商品が値切られるわけですからね、たまったものではないでしょう。おまけに値切られて断りにくくなります。メーカーにしてみれば戦々恐々としていることでしょう。

家電量販店の再編劇、その動向はなかなか興味深いものがあります。今後も目が離せないですね。