世界のお財布としての欧州

財政再建と経済成長の両立という矛盾

Camp David で執り行われた G8 が終了しました。G8 での主要なテーマは欧州の財政危機問題でした。この会議において、「欧州は経済成長と財政再建を並行して進める」という方向性で合意が成立しました。

緊縮財政による財政再建を強く主張したのはドイツです。一方、「成長路線」という表現で政府の大幅支出を画策しているのはフランスです。さらにフランスと同様の主張をしているアメリカも欧州の「成長路線」を支持しています。G8 は「緊縮財政派」と「成長路線派」が対立の火花を散らす場であったと言えます。

どちら側で決着がつくかを私は注目していましたが、蓋を開けてみれば「財政再建」と「成長路線」がひとまずお互いの言い分を認めあった形で声明が発表されました。ひとまず各国の面子を立てるという決着がついたと言ってよいでしょう。

しかしながら、財政再建と成長路線は根本的に矛盾します。簡単に言えば、財布の紐を締めつつ緩める、と言っているわけです。そんなものが両立するはずはありません。ですから、後々に必ず両派の対立構造が再燃することになると思います。

くすぶる欧州の火種

また、欧州の問題児ギリシャのユーロ離脱の可能性が示唆されはじめました。春先に破滅的なデフォルトこそ回避したギリシャですが、ここにきて財政問題が再発しています。

ギリシャの財政問題は根本的な解決に至っていません。国内においても緊縮財政を支持する人たちと積極的な財政出動を支持する人たちの間で政治的な戦いが繰り広げられています。未だギリシャの政治的混乱は解決の目途が立っていません。

もし仮にギリシャがユーロからの離脱をすることになれば、それは欧州の分裂を示唆するものとなります。ひとたび統合に向けて舵を切った欧州が再度分裂の危機にさらされることになります。

欧州分裂を喜ぶ人たち

欧州情勢を見る上で重要なのは、欧州統合を目指す人がいる一方で、欧州分裂を望む人たちがいることです。

最近、ギリシャのユーロ離脱観測が出始めた際に、イギリスの紙幣印刷会社がドラクマの印刷準備を始めたと報じられました。これは当てつけの意味合いが強いものでしょう。これはギリシャのユーロ離脱を唆すに等しい。ギリシャさんユーロから離脱するならドラクマを刷ってあげますよ、さっさとユーロから離脱しなさいよ、ということだからです。

イギリスは欧州の分裂を望んでいるでしょう。同様にアメリカにとっても欧州は分裂状態にあった方が望ましい。ユーロというのはこれらの国にとってみれば目の上のタンコブであり、その繁栄は自国の利益にならないものです。

そのような立場にある国にとってみれば、欧州全体が一致協力して「緊縮財政」というやせ我慢をしてもらうより、各国政府が自国の利益に忠実に利己的な経済政策を取ってもらった方がありがたい。自国民の雇用を守るために、他の欧州諸国の都合を無視して大盤振る舞いしてもらった方が望ましい。

欧州に与えられた役割=世界のお財布

また、アメリカは国内に雇用問題を抱えています。雇用問題を解決するには国内産業を奨励する必要があります。しかし、その国内産業にとってみれば、製品を買ってくれる顧客がいない限り仕事の始めようがありません。

アメリカは世界中で顧客になる存在を探しています。そんな中で出てきた欧州の成長路線の話です。アメリカにとって、これに乗らない手はありません。経済的に疲弊した欧州の各国政府が大盤振る舞いでモノを買ってくれる。こんなおいしい話はない。このような背景の下でアメリカはフランスの成長路線転換を歓迎しているのです。

ここしばらくの間、欧州は緊縮財政から成長路線へと風向きが変わってきました。その方向性は収束に向かうのか継続に向かうのか、それは今のところ分かりません。ですが、欧州が成長路線を採択するとした場合、欧州側から見れば投下したお金が欧州内で循環させることを考えるはずです。その一方で、欧州の外側のプレイヤーは、そこで循環するお金を我田引水のごとくに自陣営に引き込むことを考えるでしょう。当面の間、この点を巡って各国の間で駆け引きが行われることになるだろうと私は考えています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする