坂の上のクラウド-曇のち晴?曇のち雨?-

クラウドって実際どうなの?

クラウドコンピューティングという言葉が巷で言われ始めてから随分と経ちます。今でも雑誌や IT 系のニュースサイトなどではクラウドというキーワードで情報が流布されています。

ですが、私の肌感覚で言えば、クラウドってそれほど流行っているようには思えません。この感覚の違いって何なんだろうといつも思います。確かに SaaS、PaaS、IaaS といったキーワードは良く聞きます。また、実際にオンプレミスをやめて、クラウドサービスの利用に切り替えた事例も知っています。ですが、ネットで言われるバラ色の未来は現実とは程遠いというのが私の感想です。

ですので、クラウドがビッグビジネスになると言われても、あまりピンと来ません。実際のところ、クラウドってどうなんだろう?ここ数年、この疑問は私の中で払拭できずにいます。

クラウドという驚異

正直に言って、クラウドということが囁かれ始めた当初、多くの方が言うように、かつて盛んに喧伝された ASP と何が違うのだろう?と私は思っていました。ASP(Application Service Provider) というのは通信回線越しにアプリケーションだけを提供する業態のことです。簡単に言えば、手元のパソコンで動いている Excel などのソフトをネット越しに使うことができるようにしてくれるサービスのことです。

こういうサービスはユーザにとって大きなメリットがあります。ユーザは本質的にアプリケーションが使いたいだけで、パソコンそのものには普通は興味がありません。例えば、ブログサービスなどを考えても分かりますが、自前でサーバを立ち上げてブログを作る人は少数なはずです。だって、面倒くさいから。大抵の人はブログサービス提供者の提供するブログに相乗りするはずです。

ユーザにとってメリットがあるはずなのに、ASP という業態はいつの間にか聞かれなくなってしまいました。これは私にとっては不思議なことです。何故なのか私には分かりません。ですが、事実として、ASP は廃れてしまったのです。

ASP という亡霊がクラウドというお化粧直しをして盛んになってきた時、これは中小の IT 事業者にとっては脅威になるだとうなと私は感じました。確かに ASP は駄目になってしまったのですが、手を変え品を変えクラウドという名前で本格的に普及し始めると、どうしても中小事業者に勝ち目が無くなってしまいます。

クラウドというビジネスは本質的にインフラビジネスです。規模の経済が強烈に効くビジネスです。巨大なデータセンターを建て、そこに機材一式を集約する。そしてその運用を業者が一手に引き受ける。そうすると、まず、機材の集積度が高まることで単位当たりの地代コストが下がります。また、業者が巨大になればなるほど機材の購入に関して購買力が高まります。また、単位当たりの人件費も下げることができます。結果的に、規模の大きな事業者がコストに関する主導権を握ることができます。結局、大手しか生き残ることはできなくなります。

クラウドビジネスの勝者は、恐らく NTT DoCoMo のような感じになると思います。NTT DoCoMo の強みは圧倒的な物量のインフラにあります。膨大なインフラと巨大なユーザ数を獲得した NTT DoCoMo は何をしたでしょうか? サードパーティにアプリケーションを作らせたのですね。

アプリケーションとインフラは補完関係にあります。どちらか一方が欠けてもビジネスは成り立ちません。そこで、一見したところ、両者は協業関係にあるように見えます。両者が協力して魅力的なサービスが出来上がります。その高品質なサービスにこそユーザは価値を感じてお金を払うのです。ここまでは実に美しいお話です。

次に問題になるのはユーザから集めたお金の分配です。NTT DoCoMo とサードパーティのアプリケーションベンダーの間でお宝の山分けをするわけです。ですが、そのほとんどは図体のデカイ会社の方にお金が流れていきます。サードパーティにはお小遣い程度のお駄賃が支払われるだけです。

クラウドが普及すると、こういう図式が成り立つのですね。

ピークを過ぎた?

クラウドビジネスが今後どのような方向に進んでいくのか、今の私には分かりません。ですが、データを見ているとピークを過ぎてきたのかなと感じます。

上図は Google Insight for Search で “cloud computing” というキーワードの検索頻度を調べてみた結果です。Google の Gadget を使っているので、読者の皆さんがこの記事を見るタイミングで結果は変わってしまいます。その点は注意してください。この記事を書いているのは 2012/05/21 です。この時点では、明らかに “cloud computing” というキーワードの検索頻度が下がってきています。

もちろん、これだけの根拠でクラウドは終わったと結論付けるのは乱暴すぎます。ですが、私の肌感覚と妙にマッチする結果です。

この結果が示す通り、クラウドがブームで終わってしまうのか、あるいは本格的な普及期に入って市場が伸びていくのか、もう少し時間をかけて見ていく必要があるかな。今の私はそう考えています。

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