waterfall model は守破離の守

守破離のこと

私が初めて守破離という言葉を知ったのは数年前になります。ある会社の人事部の部長とお話をしていると、いきなり「しゅはり」ということを先方が仰いました。私は何の事だか分からず、思わず聞き返してしまいました。そこで初めて「守破離」ということを教えてもらったのです。

「守破離」とは観阿弥・世阿弥が言い始めたことです。それは能の修業のプロセスを表した言葉です。この言葉は能にとどまらず、広く稽古事の修業の場でも使われているようですね。

まず何事かを極めようと思えば「守」の段階を経なければなりません。「守」とは先達や師匠の教えを 1 から 10 まで忠実に真似ることです。そこで文句なんて言ってはいけない。馬鹿正直に師匠の指導に従うのです。箸の上げ下ろしまで師匠の真似をすることです。

「守」の段階が終わると「破」の段階に進みます。そこでは師匠の教えを超えて自分なりのオリジナリティを発揮することがテーマとなります。「守」の段階が過ぎると、既に基本的な動作の型は自分の身体に刻み込まれているはずです。基本動作は意識しなくてもできるようになっているはずです。ここでは、その基本動作という殻を抜け出して自分なりのアレンジを加えることがポイントとなる。

最後の段階は「離」です。ここでは、基本となる型からも自分自身の編み出した型からも自由になることがテーマです。もはや型にあって型にとらわれず自由な境地に達するのでしょう。このようにして芸能の道は完成に向かいます。

私は守破離という言葉は非常に含蓄のある言葉だと思います。

システム開発における waterfall model

システム開発という世界は非常に移り変わりの激しい世界です。つい先日まで最新と喧伝された手法・技術が、今日になると誰も見向きをしないものになる。すぐに陳腐化してしまうのです。正確に言うと陳腐化「させられてしまう」だけなのかもしれませんが…。

近年、システム開発の世界で評判の悪いものに waterfall model があります。waterfall model とは、システム開発のプロセス(手順)をモデル化したものです。一般に下図のような絵で表現されることが多いです。また、その形から「V字型モデル」と呼ばれることもあります。

BL201205-41-01.png

waterfall model が言っていることはそんなに難しいものではありません。

(1)きちんと工程を分けること
(2)その工程を順番に処理すること

waterfall model はシステム開発するときはこうするといいよと言っているだけです。工程に関しても、大ざっぱに言えば

(a) 何を作りたいのかを明確にしましょう (要件定義)
(b) それを実現する方法を明確にしましょう (設計)
(c) では実際に作ってみましょう (製造(実装とも言います))
(d) 作ったものが正しく動くか確認しましょう (試験)

こう言っているだけです(*1)。

この waterfall model はよく批判の対象となります。ですが、何がいけないのかが私にはさっぱり理解できません。waterfall model は誰が見ても直観的に「そうだよな」と思える model だと思うのですが…。

waterfall model は後戻りのパスがない、と言って批判されることがあります。ですが、単純に後戻りのプロセスを組み込めばいいだけではないかと私は思います。また、欠陥の発見が遅れるという批判もあると思います。ですが、それはどのような手法を用いても回避しきれるものではないと思います。人間は神様ではありません。

model というのは所詮 model(模型)です。プラモデルの飛行機を見て「本物と違うじゃないか」といきり立つことに何の意味があるのでしょうか。メルカトル図法の地図(普段私たちが目にする地図です)を見て「北極と南極の大きさが歪むから使い物にならない」ということは建設的でしょうか。waterfall model に対する批判は私にはさっぱり理解できません。

基本に忠実に

waterfall model は「守破離」の「守」に相当するものだと私は思います。それはシステム開発の基本中の基本です。waterfall model に従ってシステム開発をし続けることは、特に経験の浅い人にとっては必要なことだと思います。

そこを破って離れていくのは十分に修業を積んでからでも遅くはないと私には思えるのです。

(*1) 私はこういう風に理解しているのですが、もっと精緻化して説明した方がいいのでしょうか?私には waterfall model がこれ以上の事を言っているとは思えないので、このようなアッサリした説明でいつも済ませています。

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