ヒトの流れがカネの流れを変える-関西鉄道各社の輸送人員数を読む-

鉄道輸送人員数と関西経済

久しぶりに関西経済のお話をしてみたいと思います。

以前、関西電力の電力使用量と関西経済のお話をしました。その時から思っていたのですが、いつか、関西の鉄道の輸送人員数と関西経済の関係を調べたいと思っていました。

ただ、関西電力の場合は1社だけを調べればいいのですが、鉄道となると複数社のデータを調べないといけません。面倒だなと思っていたのですが、ちょっと頑張ってやってみようと思ったのですね。はい、頑張ります!

最初に結論めいたことを書いてしまうと、鉄道会社の輸送人員数の推移を追いかけてみて分かることは、少子高齢化によって関西の人の流れが変わっているし、これからもその傾向は続くだろうということです。そして、関西経済の立て直しを考える際には、この事実に照らして作戦を立てていかないといけないということです。

どうしてこういうことが言えるかというと … まぁ本文を読んでみてください。

減少する鉄道利用者

関西の大手私鉄と言えば、阪急、阪神、京阪、近鉄、南海あたりです。それと JR 西日本が加わります。これら 5 + 1 社のデータを中心に見ていきましょう。まずは、これら 5 + 1 社の合算での輸送人員の推移をグラフにしてみました。積み上げの棒グラフにしてあるので、棒の高さが関西鉄道各社の輸送人員数を表すことになります。本当は各社の輸送人員数を単純に合算するとおかしくなるはずですが、関西での鉄道利用者数の指標として十分モノの役に立つと思います。

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予想通りの結果ですね、関西の鉄道利用者数は減少傾向にあります。それから、輸送人員数のランキングとしては、JR 西日本 > 阪急 > 近鉄 > 京阪 > 南海 > 阪神 となります。関西在住の人なら「そうだろうな」と感じられるのではないでしょうか。ちなみに、阪急と近鉄は順位が逆転していた時期もあります。 順位が逆転したのはつい最近の話です。

このグラフでは各社の輸送人員数の増減が分かりにくいので比率ベースでグラフにしてみましょう。

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やはり、各社とも輸送人員数が減少傾向にあります。これが基本シナリオですね。ですが、JR 西日本に関しては頑張っています。最近まで横ばい傾向を保っています。さすがに最近はタレてきていますが…。

あと、阪神がかなり頑張っています。これ、何だかお分かりになりますか?関西の人なら分かることでしょうが、阪神電鉄は 2009 年 3 月 20 日に、阪神なんば線を開通させたのですね。これによって神戸方面から難波方面に直接行けるようになったのです。この影響が大きかったようですね。ですが、これほどまで効果があるとは私としても意外でした。JR 西日本の乗客を奪うことに成功したのかもしれません。

通勤する人が減っている

関西の鉄道輸送人員は減少傾向にある。これが関西における状況の基本的なストーリーです。ですが、どのような層が減っているのでしょうか?もう少し詳しく見ていきましょう。

下図は定期利用者とそうではない利用者(非定期利用者)で分類してみたグラフです。ちなみに、このグラフは JR 西日本は入っていません。数字がうまく拾えなかったからです…。

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これまた、ある程度予想できることですが、定期券を利用する人が減っていますね。単純に言えば、働く人が減っているということです。別に失業者が増えたとかそういうわけではない。根本的な生産年齢人口が減っている、すなわち働き盛りの人が減っているのです。恐らく、そのあたりの事情が反映された数字になっていると思われます。

その裏返しでしょうが、定期を使わずに鉄道を利用する人は減っていません。むしろ微増傾向にあります。これはこれで面白い話だと思います。関西全体ではそれほど人口は減っていません。ただ、少子高齢化は進んでいます。ですから、お年寄りの方が昼間や土日に利用されるケースが増えているのではないかと想像できます。

ただ、ここまでのお話で 1 つ気になることは、鉄道系 IC カードの状況です。関西私鉄では PiTaPa というカードが使えます。首都圏で言うところの PASMO ですね。この利用者が定期に含まれるのか、それとも非定期に含まれるのか、ちょっとよく分かりません。その点を割り引いてグラフを眺めてください。

最後に、定期と非定期で分けて、各社ごとの輸送人員数の推移を見てみましょう。

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まず、定期券利用者に関しては、近鉄、阪急、京阪あたりの落ち込みが目につきます。南海は、まだマシ。阪神は頑張っています。

一方、非定期利用者に関しては、横ばい傾向が目立ちますね。微増が目立つのは京阪でしょうか。そして、阪神ですね。じわっと非定期での利用者数を増やしています。

今までの分析で分かることは、電鉄各社ごとでトレンドについて大きな差はないということです。これは何を意味するかと言うと、結局、関西の人口構造が電鉄各社の利用者構造に反映されているということです。電鉄各社がどう頑張ったところで、この大きな流れを変えることはできません。

人の流れが変わる関西

今までのお話から得られるインプリケーションは、関西の人口構造が鉄道会社の利用者構造に影響を与えているということです。そして、鉄道会社の本業=鉄道部門の収益に影響を及ぼしていることは想像に難くありません。

それだけではありません。もう少し大きな物語としては「関西の人の流れが変わっている」という点が重要です。

少し想像してみてください。関西の通勤客は減っています。今までは、朝に大阪、京都、神戸のオフィス街に人が流れていました。そして夜になると逆向きの人流れがあったはずです。このパターンが崩れてきているのでしょうね。逆に、退職して悠々自適の暮らしをしている方々は郊外に住んでいるはずです。その人たちが昼間や土日に移動をしているだと思います。何のために移動するのでしょうか。ベタな想像をすると買い物でしょうかね。

郊外に住む高齢者の方は、どういう移動パターンを取るでしょうかね?わざわざ繁華街まで移動しようと思うでしょうか。私だったらそうは思わない。私だったら 2 駅か 3 駅先の「ちょっとしたものが全部揃うところ」に行くのではないかと想像します。あんまり、梅田、難波、三宮、河原町なんかに行こうとは思わない(あくまでも主観ですが…)。

そうなると、サラリーマンの動きも輪をかけて変わってくるのではないかと思います。ただでさえオフィス街に行く人が減っているのに、需要が都市の中心部ではなく周縁部に移るので、働く人もそっちの方に移動するようになる。

オフィス街に閑古鳥が鳴けば、その人たち相手の商売も寂れていくでしょう。サラリーマン相手のお弁当屋とか食堂なんかも店仕舞いするところが増えるかもしれません。居酒屋なんかも繁華街に出店する旨みがなくなるんじゃないかな。当然、オフィス賃料も値崩れが止まらなくなっていくような気がします(これはまた調べてみたい)。

こんな妄想は幾らだってできます。私の妄想が本当に現実のものになるかどうかは分かりません。当たるも八卦、当たらぬも八卦。ですが「関西の人の流れが変わる」ということは確実に言えると思います。

最後に梅田北ヤード再開発について

大阪の梅田というところは地図で見てみると良く分かりますが、実に無駄な土地の使い方をしています。


大きな地図で見る

JR 大阪駅の左上の方に巨大な貨物駅がありますね。何でこんな梅田の超一等地に貨物駅なんかがあるの?と私はいつも思うのですが、このあたりの再開発がじわじわ進んでいます。所謂、梅田北ヤード再開発です。

だけど、ここに何を建てるつもりなんでしょうか?オフィス街にするつもり?だとすると、賃料の値崩れに拍車がかかるだけだと思います。また、商業用地にすると、今度は誰がここまで来るんだ?という話になります。閑古鳥が鳴くだけだと思うけどなぁ…。

大阪を含めて関西経済の根本的な問題は「お財布の数と中身」が根本的に足りないことだと思います。ここがどうにかならないことには関西経済は何も前に進まないと思います。おまけに、その「お財布」の持ち主も梅田なんかに集まるかどうかわからない。梅田北ヤード再開発はどうなることか心配ですね。

そんなことするぐらいだったら、東アジア最強レベルの金融センター作るとか、カジノ都市を目指すなら目指すで徹底して高級ホテルと巨大カジノ施設を集約させるとかした方が、よっぽどエッジが利いて良いと思います。

鉄道会社の輸送人員数の推移を見ていると尚更そういう風に私は感じてしまうのです。