ハッカーになれなかった人のために

ハッカーが輝いていた時代

まず始めに断っておきますが、以下、ハッカーというと「コンピュータの凄い人」という意味で使います。決して、クラッカー(悪さをする人)のことを意味するわけではありません。ハッカーに対する誤解は昔から指摘され続けてきましたが、一向に変わらないですね。まぁ、単に用語の定義の問題なので普通の用法に合わせた方がいいのかもしれません。ですが、ここではハッカーに対する敬意を表して、敢えて「ハッカー」という用語を使います。

その昔、ハッカーが輝いていた時代がありました。もちろん今も輝いているのかもしれません。ですが、かつては本当の意味で「凄い」ハッカーの人たちがいたのです。私がコンピュータに手を染め始めたのは 1980 年代です。その当時、インターネットなんて全然普及していない時代です。その時代には雑誌であったり、黎明期のパソコン通信などを通じてハッカーの人たちが活躍していました。

その当時のコンピュータの性能なんて、今とは比べ物にならないぐらいショボいものだったのです。当時は 8bit だとか 16bit の CPU が主流でした。32 bit の CPU なんて凄すぎて目がくらむほどでした。記憶媒体も同様です。私が最初にさわった機械はメモリが 64Kbyte でした。T でも G でも M でもない、K の単位ですよ!1990年台になっても、メモリが 1 Mbyte で凄いと思ったり、数百Mbyte の HDD でも平気で数十万する時代でした。まだまだ、フロッピーが当たり前だった時代です。

コンピュータに関する技術も今から見れば全然レベルが低かった。今時、プログラミング言語なんて掃いて捨てるほどありますが、当時は全く違います。そもそも、コンパイラとかインタプリタそのものが貴重でした。C 言語のコンパイラを手に入れるために数万円、下手をすると数十万円を支払わなければならなかった。プログラムを書くこと自体が非常に敷居の高い行為だったのです。

そんな時代に一輪車に乗りながらお手玉をするような凄腕のハッカーたちがいたのです。周囲の人たちはその腕前に拍手喝采しました。彼らが魔法使いのように杖を一振りすれば、コンピュータは驚くような芸を披露したのです。私もそのようなハッカーたちの腕前に惚れこんだ 1 人でした。

その当時、本当にハッカーは輝いていました。

ハッカーから ただのおじさんへ

今やコンピュータは完全にコモディティになりました。何時でも何処でも誰でもコンピュータにアクセスできます。それは素晴らしいことです。

それと同時に曲芸のようなことをするハッカーの価値は次第に下がっていきました。誰も曲芸なんかには見向きもしない。他人の成果を活用する仕組みが完全に出来上がってしまったので、誰でも曲芸の真似ごとができるようになったのです。つまり、曲芸が当たり前になってしまった。

かつては魔法使いのように神秘のヴェールに包まれていたハッカーも、今ではただのおじさんです。そこには、かつてのオーラを見出すことはできません。

私はどちらかと言えばハッカーになり損ねた人間です。ひょっとするとハッカーになっていたかもしれない、今でもそう思うことがあります。その当時、結構、曲芸には自信がありました。新調した一輪車に乗って、ひょいひょいとお手玉をする。それは実に楽しかった思い出です。ですが、今の私はハッカーではありません。そうして、私と同じような境遇の人は多いのではないでしょうか。

サンデーハッカーでいいじゃない?

ハッカーになれなかった人は今何をしているのでしょうか。

ある人は数字とにらめっこする毎日を送っているのかもしれません。またある人は技術者として暮らしているのかもしれない。毎日会議に追われる人、本当は現場仕事が好きなのに毎日意思決定を求められる人、そういう人もいるかもしれません。

キャリアのスタートラインで、ハッカーになることを心に秘めていた人はいっぱいいると思います。そして、結局はハッカーになれなかった人もそれと同じだけいっぱいいるでしょう。そういう人たちは今の仕事に満足しているか不満を感じているか。そんなことは私には分かりません。それは詮索し過ぎでもあります。

ですが、そういう人たちに聞いてみたいのは「もし、今、ハッカーとして何不自由なく生きていけるならばハッカーになりますか?」ということです。私だったら YES です。好きなことをして生きていけるならそれに越したことはない。ハッカーになれなかった人は同じような感慨を持つと私は強く信じています。

一輪車でお手玉は嫌いですか?好きなのであれば趣味でやればいいと思う。

ハッカーになれなかった人、そういう人はサンデーハッカーになればいいんです。

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