海外M&Aを進める日本企業の「残像」

海外 M&A を進める日本企業

最近、日本企業が活発に M&A を進めているそうです。

衰退よ、サヨナラ! 再び世界を股にかける日本[JBPress 2012/06/08]

日本企業が積極的に海外の M&A を進める背景として、驚異的な円高が指摘されています。為替の条件が有利だから、国内ではなく海外の企業買収を進めているというわけです。

ですが、その発想は成金的な発想ではないかと私は思います。あぶく銭を手にした成金がモノの本当の価値も分からずに買い漁る。私にはそういう行為にしか見えません。この記事を見て「日本企業は本当にお得な買い物をしているのか?」という感想を私は持ってしまいます。

海外 M&A はお得か?

本当に海外企業の買収はお買い得なのでしょうか?

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上図は、アメリカ、日本、中国の株価と為替(USD/JPY)のここ1年間の推移をグラフにしてみたものです。株価に関しては 2011 年初頭を 1.000 とした値をグラフ上にプロットしてあります。

為替に関しては、確かに円高であることが理解できます。対ドルに関して、一時期 75 円台という歴史的な水準に達するほどの円高になりました。その後は為替介入などもあって、円高には歯止めがかかっています。2012 年になると日銀が遂に金融緩和するか?という雰囲気になり、円高の緩和に向かいました。ですが、最近では、ずるずると円高トレンドに回帰しつつあります。

株価に関しては、各国ともそれほど目覚ましい伸びを示していません。アメリカのダウは多少値上がりしていますが、まだまだ低空飛行という表現が適切だと思います。また、日経平均も上海総合も株価は基本的に下落傾向にあります。

株価が下がるということには 2 つの側面があります。まず、株の発行体である企業の価値が割安になっているという側面があるでしょう。ですが、企業が実力以下の評価しかされていない場合に初めて「割安」ということが言えます。たとえ株価が下がったとしても、まだまだ企業の実力が過大評価されている可能性だってあるわけです。

株価下落のもう 1 つの側面は、市場参加者が「投資機会が失われている」と判断したという可能性です。その市場で行われている事業に将来的な魅力が少なくなれば、投資家が資金を引き揚げるインセンティブが高まります。この側面の方が重要ではないかと私は思います。

今までの話をまとめるとこういうことです。日本企業が海外企業の M&A を進めていると言っても、それは単に値段の安さに釣られて買い物しているだけではないかという懸念が払拭できないということです。つまり、新商品が発売される前の在庫一掃セールで嬉々として買い物をしているだけではないかということです。

企業の買収は、将来の収益性と比較して現在の価格が安い場合に初めて「割安」と言えます。今の状況を見ている限り、海外のどこを見回しても、今は嵐の前の静けさという様相を呈しています。現時点では、ちょっと海外展開は怖いのではないかなというのが私の印象です。

今は潮目が変わってきた

この記事は数カ月ほど前の過去の数字を根拠にしていると思われます。つまり、2011 年頃の日本企業が海外企業の M&A を進めてきた結果が、ようやく数字になって表れてきたということでしょう。そこにあるのは、少し前の日本企業の姿です。

最近では、ソフトバンクや楽天が中国の EC 事業から撤退するという報道がなされました。ここでは、積極的に海外企業買収を進める日本企業という図式とは真逆の構図が描かれています。むしろ、ソフトバンクや楽天の行動の方が、足下の日本企業の姿を描き出しているのではないかと私は思います。

世界は風雲急を告げています。ユーロが崩壊の危機にさらされ、中国も先行き懸念があります。そのような状況の中、少し前の日本企業の「残像」を信じすぎないほうが良いと私は思うのです。

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