官公庁のパワーシフト

膨張する厚労省

以前、政府支出の内訳を調べていた時に、本当は気付いていたけれど書かなかったことがあります。もう一度、その時のグラフを掲示しておきましょう。

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お気づきでしょうか?保健、経済業務、教育…。これって役所の割り方と同じなんですね。つまり、厚生労働省、経済産業省、文部科学省…というわけです。このグラフを官庁の組織単位の観点から見てみると面白いことが分かってきます。厚生労働省の管轄領域についての支出が増えているということです。その一方で、経済産業省や文部科学省の管轄分野での支出が減っているのです。

私は役所の仕事をしたことはありませんし、ましてや官僚組織の中のことまでは分かりません。ですが、民間企業の普通の感覚からすれば、シェアが増えている部門というのはどうしても力を持ってきます。花形分野としてちやほやされがちです。これは役所の場合も当てはまるのではないかと思われます。

厚生労働省に関する領域でお金の流量が増えているということは、必然的に厚生労働省の発言力が強まっているはずです。その一方で、経産省や、文科省の発言力は相対的に低下しているのではないでしょうか。端的に言えば、少子高齢化という流れの中で官庁の中においてもパワーシフトが起こっていると考えるのが妥当ではないかと私は思います。

露出する元経産官僚

また、メディアを見ていて気付くことはないでしょうか?最近、”元”経産省の人が本を書いたりメディアに露出する機会が増えているように私は感じます。例えば、古賀茂明さんという方がおられます。私はあまり古賀茂明さんの事を存じていませんが、何やら大阪市の橋下徹市長に抜擢されてアドバイザー的な活動をされているようですね。他にも岸博幸さんという方も、今では慶応の先生をされていますが、元々は経産省の官僚でした。本もお書きになられているようですし、テレビに出演もされているようです。あと、以前このブログでも書評を書いた中野剛志さんも京大に出向中の経産官僚です。

これは個人的な感覚ですが、元経産省の役人をやっていたという方には結構な頻度でお会いします。実業界の中でお会いすることもありますし、アカデミズムの世界でお会いすることもあります。
その一方で、元厚生労働省の役人という方で本を書いて名を馳せたという人を寡聞にして私は知りません。また、テレビなどのメディアに露出してきたという話も少ないのではないでしょうか。ネットの上で有名になった元厚労省官僚というのもあまり聞いたことがないですよね。

生レバー禁止事件

また、最近、厚生労働省の管轄での話題に事欠かないような気がします。

まず話題になっているのは、生レバーの飲食店での提供禁止の件でしょう。ご存知の通り、厚生労働省は 7/1 から牛の生レバーを焼き肉店などで提供することを禁止しました。最悪の場合、懲役 2 年以下または罰金 200 万円以下の刑罰が科される可能性があるそうです。個人的には、人々が食べたいと思うものを個々人の自己責任で食べることができる余地ぐらい残してもいいのではないかと思いますが、厚生労働省的には「絶対ダメ!」なのだそうです。それにしても、ちょっと罰則厳しすぎませんか?

それから、吉本所属のお笑い芸人河本準一さんの母親が不正に生活保護の受給をしていたとしてかなりバッシングされています。生活保護に関する問題も結局は厚生労働省の管轄でしょう。この問題を受けて、厚生労働省は生活保護の受給実態を調査するようです。このお話、どこの誰がどのような意図で騒ぎを大きくしたのか、そこまでは私には分かりません。ただ、このお話は厚生労働省との関係において考察してみることも重要ではないかと私は考えています。

官僚組織のパワーシフト

もちろん、私はここまでの話に関して因果関係を主張するものではありません。実は、厚労省という日本の陰の支配者がいて、彼らが国民を支配するために生レバーを禁止して云々…。こんなこと言ってしまえば、余りにも安物過ぎる陰謀論ではないですか?さすがに、そこまで電波な事を言うつもりはありません。

ただ、官僚組織の中でのパワーシフトが起こっているのでは?という点は、そんなに的外れな話ではないと思います。それは少子高齢化という日本の置かれた状況の中で必然的に起きてくることでしょう。この国にとって高齢者が今後増加するということは大きな問題です。その問題に対処するために所管官庁が肥大化して、権力が集中するのは当然の帰結のような気がします。

結局、言いたいことは、今や厚生労働省こそが「官庁の中の官庁」の位置にいるのではないか、ということです。そして、そのフレームの下で社会現象を眺めてみることが重要ではないかということです。

昨今の消費税増税論議の黒幕は財務省だ!と言う人は多いですよね。ですが、消費税増税の議論の背景には、高齢化が進む日本の年金問題があるわけです。こここでは厚生労働省との利害が相当程度に絡んでくるはずです。消費税増税を巡るパワーゲームの曼荼羅の中に、厚生労働省というプレイヤーを入れてみることで別の地平が見えてくるかもしれません。

また、いくら若年層が中心となって経済成長を唱えたところで、肝心要の管掌官庁がパワーゲームに負けてしまうのであれば、気合いの入った経済成長なんて期待できるわけがないな、という(悲観的な)見通しだってできてしまうわけです。

このフレームの弱点は検証のしようがないという点にあります。説得力に欠けるのですね。ただ、思考のバリエーションを増やすという意味で道具箱に入れておいて損の無いフレームだとは思います。

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