「バブル崩壊」という戦後は終わった

銀行が法人税の支払いを再開

5 月の初旬にこんなニュースがありました。覚えておられるでしょうか?

法人税納付、大手銀が相次ぎ再開[MSN産経ニュース : 2012/05/11]
大手銀行、法人税納付へ=三井住友銀行やりそな[ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版 : 2012/05/11]

日本の大手銀行が法人税の支払いを再開するというお話ですね。三菱東京 UFJ 銀行などは 2011/03 期から法人税の支払いを再開しているそうです。三井住友銀行、りそな銀行などは 2013/03 期から法人税の支払いを再開する予定だそうです。

このブログの記事を書いているのが 2012/06 の末ですから、あまりタイムリーな記事紹介というわけではないです。もはや旧聞に属するものかもしれません。ただ、この話はあまり話題にはならなかったような気がします。少し不思議ですね。本当は大きな意味を持つものかもしれないと思うので、少し取り上げてみます。

バブル崩壊の処理に 20 年

別に銀行も税金の支払いを籠脱けしてきたわけではありません。バブル崩壊によってできてしまった巨額の欠損金の穴埋めをしてきたのです。単年度で利益を出しても、その利益で大きな穴をふさぎ続けてきたということです。その結果、税金の支払いが免除されてきたわけです。

こういう比喩はお叱りを受けるかもしれませんが、結局はこういうことです。事業に失敗して膨大な借金を抱えた人が何年もかかってようやく借金を返済し終えたんだよ、といった話は良く聞きますね。それと同じです。銀行はバブル崩壊という「失敗のツケ」をようやく支払い終えるということです。

それにしても長かった… 20 年ですよ、20 年! 1980 年代末期、日本はバブルというトチ狂った オルギア(饗宴, 乱痴気騒ぎ) に明け暮れていました。私と同じぐらいの世代の人たちは、その当時、高校生ぐらいだったはずです。そう、自分たちの上の世代の “大人” たちが毎日アホ踊りをしているのを見ていたのですね。私の同年代の人たちというのは、高校生・大学生の頃に目の前で散々他人のお祭り騒ぎを見せつけられておきながら、いざ社会に出る頃になるとお祭りは終わってしまって、その後片付けだけをやるように言われ続けた世代なのですね。そうして、祭りの後片付け=不良債権の処理が延々と続いてきたわけです。ですが、その後片付けがやっと終わるということです。20 年かけてやっと終わるということです。感無量ではないですか?

日本の銀行に対しては、かなり辛辣な意見が投げかけられる場合が多いと思います。ですが、日本の銀行というのは「バブル崩壊」という大病を患って、いままで入院していたようなものです。その病もようやく治癒して社会復帰できる日がやってきたのです。ひとまずは、退院おめでとう、くらいは言ってもいいのではないかと思います。

日本経済の風景が変わる

見方を変えれば、この出来事は日本の金融機関にとっての「バブル崩壊」という戦後が終わるということです。あまり注目されていないかもしれませんが、これは非常に大きな出来事なのかもしれません。

経済の根幹である金融機関が正常化してくる、これは日本の経済の風景が変わるということです。日本の経済が新たなステージに入ってくることが期待できます。今までは攻めたくても守るしか手が無かった。ですが、ようやく攻めに回れるということです。長い目で見てみれば、ようやく日本経済が本当に戦えるようになってきたということなのかもしれません。

世界中を見回してみれば、日本と同じような病気に罹患してしまった国があります。アメリカです。日本の闘病生活を物差しにしてみれば、アメリカの入院期間も 10 年単位になるかもしれません。また、中国も先行きが少し怪しいです。中国のバブル崩壊が現実のものになれば、当面の間は闘病生活を余儀なくされるでしょう。日本はその闘病生活の苦痛がどれだけのものかを身を持って知っている。それから、欧州は… まぁ彼の地は被害者と言えば被害者ですが、こちらもベッドの上で死線をさまよっている状態ですね。

そのように考えると日本は意外と良い位置にいるのかもしれません。他の国々が医者にかからないとやっていけなくなりつつあるなかで、日本だけが闘病生活を終えつつある。気付いてみれば、日本が一番元気、そういうシナリオだってありえるかもしれません。

この出来事はあまり注目されていないことかもしれません。ですが、大きな変化というのは目につきにくいものです。誰も気づかぬうちに足下では大きなうねりが生じているのかもしれません。今の日本では悲観論が跋扈していますが、「総悲観は買い」という相場格言もあります。今一度、日本という国を再評価してみてもいいのかもしれません。