同一労働同一賃金は悪夢か福音か-働き方改革のインパクト-

非正規雇用にボーナスを

本日見かけた気になるニュースがこちら。

「非正社員にも賞与を」政府指針案 同一労働同一賃金(朝日新聞デジタル)

記事によれば、政府の定めたガイドラインの中ではこう書かれています。

同じ企業内で基本給や賞与、各種手当などに正規・非正規で待遇差をつけるのが不合理か否かを具体的に例示しており、正社員に賞与を支給して非正社員に払わないのは「悪い例」と明記。各種手当については同じように支払うのが原則としている。(朝日新聞デジタル)

非正規雇用の人にとっては素朴に嬉しい話でしょう。ただ、その裏側もきちんと見ておかないといけません。

何が問題なのか

何が問題だったのでしょうか?それは単純な話で、非正規雇用の地位が低すぎるという前提のもと、非正規雇用の地位が低すぎるのは怪しからん!非正規雇用の地位向上をせねばならん!という流れがあるわけです。

非正規雇用の地位が低すぎるのか、それとも正規雇用の地位が高すぎるのか、それはよく分かりませんけど、非正規雇用を救うというのが大義名分となっています。

ゼロサムゲームの構造下での勝者

今まで誰が得をしてきたのでしょうか?使用者、非正規雇用者、正規雇用者のトライアングルのバトルの構造はゼロサムゲームの構造になっています。労働力というリソースを巡って三者が奪い合いをしてきた。その中でワリを食っていたのが非正規雇用者だという図式があります。逆に言えば、同一労働差別的賃金という構造の下で利益を得ていたのは使用者と正規雇用者でした。

使用者から見れば、非正規雇用を活用することで人件費を下げる効果がありました。額面の人件費は非正規雇用の方が割高に見えます。ですが、使用者側から見れば、比較的容易に労働力の調整ができるという点は大きなメリットでした。長期間にわたって雇用することにコミットしなくて済むのはトータルで見れば人件費カットの効果がありました。

正規雇用者も利益を得ていたとみることができます。ゼロサムゲームの構造があるわけですから誰かが損している分だけ利益を得ていた可能性があります。同一労働差別的賃金の構造の中で、非正規雇用の人たちから収奪して、雇用の安定を得ていた可能性は十分にあります。

新たなバトルの幕開け

同一労働同一賃金という掛け声の下でこの構造が崩れていく可能性があります。もしそうなったら、その後の世界はどのようになるのでしょうか。

使用者は労働市場の自由化をさらに求めていくでしょう。使用者から見れば、非正規雇用であろうが正規雇用であろうが大差ないということになれば、今まで非正規雇用から得ていた利得を広く薄く求めるようになるでしょう。つまり、同一労働同一賃金のフレームのもとで何時でも何処でも誰彼構わず自由に雇用して解雇できるようにしてくれ!と求めるようになるでしょう。

また、使用者が今までの労働力の代替品を模索する流れも加速していくでしょう。具体的に言えば、移民政策の推進であったり、ロボットの積極的な活用、という流れが本格的に加速していく可能性を秘めています。一縷の希望はといえば、使用者が今までの労働力をブラッシュアップして生産性向上を実現できるように何らかの投資をしてくれることです。その可能性はさぁどうかしら?としか私には言えませんが。

次に、正規雇用の地位にあった人達は何を考えるでしょうか。今まではかろうじて使用者と同盟関係を結べていましたが、この構造が崩れていきます。正規雇用と非正規雇用が同盟関係となって使用者と深く対立する構図が鮮明になっていくかもしれません。正規雇用の反乱、みたいな煽り記事が出てきたりしてね。そのほかにも、労働組合の強化だ!みたいな変なところに飛び火してしまうんじゃないかなという危惧もあります。

また、正規雇用と非正規雇用の同盟チームは、今後喧しくなってくるであろう移民の議論に対する最大の抵抗勢力になるかもしれません。同盟を組んで、新たな脅威を蹴落とそうとするわけです。ロボットもこの同盟から敵視されるかもしれないですね。本気で現代のラッダイト運動がみられるのかもしれません。

停滞は全てを毀す

成長はすべてを癒す、とはよく言われることです。社会全体が成長過程にある時代というのは、こういったバトルの構図というのは大きな問題とはなりません。古き良き日本的経営、ですね。

今の世の中、社会全体に成長要素がなかなか見当たらないのです。だから、停滞が全てを毀す、という図式になっているのです。本当は使用者と非正規雇用、正規雇用は協調的関係にあるのが一番幸せだと私は思いますが、それも空しく、血で血を洗う戦いをしないといけない時代なのだろうなと。

まぁ、各自、自衛するしかなさそうですね。